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ドヴォラック(月刊ASCII 1984年8月号9)TBN [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

TBNというコーナーにドヴォラック配列についての記事があった。これはスクラップしておくべきだ。なにしろ読み物として面白い。うんちくの一つになるかもしれない。役には立ちそうもないけど。
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A:『キーボード』というコンピュータの入力装置は、パーソナルコンピュータを使っていく上で現在一番使用頻度の高い入力装置でしよう。
 現在ほとんどのパーソナルコンピュータが採用しているキー配列はJIS又はASCII配列と呼ばれるもので,これはその文字キーの並び方を,タイプライタの多くが採用しているQwerty(クワーティー)配列(図2)というキーの配列を基にして定められているものです.御質問にあるDvorak(ドヴォラック)配列は,Qwerty配列の持つ欠点を改良しようとして考案された様々なキー配列の一つです.
 このDvorak配列について説明する前に,現在のキー配列の主流であるQwerty配列について少し触れておくことにしましょう.
 Qwerty配列の登場
 Qwerty配列の起源を調べていくと,1873年に商品化されたショールズ(Sholes)とクリデン(Glidden)の考案したタイプライタまでさかのぼります.このタイプライタの文字|配列は現在のものとそれほど変わらず,ショールズが彼の日常経験を基に次の様な過程を経て配列を決定したとされています.|いわゆるABC順の鍵盤配列の検討から始まり,英文中に現れる頻度の高い連続2文字が丸く配列されたタイプライタの印字棒の籠の中での対向位置で打たれる様に配置する,という方法におちつきました.これはある文字の印字棒が印字後元の位置に戻る前に次のキーを押した時,その2本が近接していると絡まってしまうからです(写真1).
 この様な機械的な問題を第一に配列を決定していった為、このキー配列はおのずから『速く・正確に』という打ちやすさを追求するものではなくなったのです.その後機械的な問題は順次解決されていったのですが,配列そのものの改善はあまり行われず,2~3文字の改良が加えられたのみで現在の配列に至っています.
 この配列がQwerty配列と呼ばれるものなのですが,これはキーD段の左端から,Q,W,E,R,T,Yという順でならんでいる事に由来しています。
 Qwerty配列の改良そしてDvorak配列の登場
 Qwerty配列が一般化してから暫く後の1900年前後になると,Qwerty配列の欠点を改良すべく様々なキー配列改良案が考案され,『シヨールズのキーボードの改良』という様なたくさんの新案が世界各地の特許局に提出されました.これらの改良案は,次の2種類に大別されます。
 ①文字の配列のみを変更(入れ換え)する改良案
 ②キーの位置を変更(例えば右手用のキーのグループと左手用のそれを分離)する改良案.
 Dvorak配列はこのうちの前者の改良案にあたり,当時シアトルのワシントン大学准教授であったAugust Dvorakによって考案され,1936年に特許が下りています.
 Dvorakは当時始められたばかりの学問|E』(Industrial Engineering:管理工学)の研究手法である『動作研究』を用いて,タイプ技法の研究・調査を始めました.
 そしてこの研究結果と高使用頻度の単語の文字列を注意深く研究する事によって,キー配列が決定されたのです.その後,":"などいくつかの変更が加えられましたが,基本的には変更はなく図3の様な配列におちついています。
 このDvorak配列が現在でもQwerty配列の代替案のなかでも最も有力視されているのは,広範囲の教育機関などで科学的な実地検証が行われているからでしょう.このテストの結果によると,Dvorak配列はQwerty配列と比較して次の様な点ですぐれていることがわかっています。
 (1)各指の使用頻度がQwerty配列より平均化されている(図4).
 (2)中央段(図2のC段)だけでタイプ出来る『よく使われる単語』の数はQwerty配列の約100語に比べDvorak配列では約3000語と多い(表1参照).
 (3)指の移動量がQwerty配列に比べ少なくて済む.
 (4)左右のキー(手)が交互に使われる率がQwerty配列より高い。
 (5)Qwerty配列に比べ、ムリな指使い――片手打ちで打ちにくい連続2字組をタイプする,例えばキーの段を一段飛び越してキーを押すなど――をすることが少ない(図5参照)
 以上はいわゆる『キー配列の静的な』データですが,人間が使用してみた,つまり『キ一配列の動的な』データとしては次の様なものが得られました。
 ①タイプを習い始めるものにとって,同じ成果を得るまでの訓練期間はQwerty配列のいるで済む(学習が容易である).
 ②ミスタイプをする率はQwerty配列の約である(正確にタイプしやすい).
 ③同じ時間内にタイプ出来る文書量がQwerty配列に比べ15~20%多い(速くタイプ出来る).
 ④Qwerty配列のタイプからDvorak配列に転向したすべてのタイピストが、タイプによる疲労が減ったと証言している(疲労度が少ない).
 なぜいまだにQwerty配列が主流なんだろう
 ここまで挙げたDvorak配列の特徴をお読みになって、なぜこのDvorak配列が今まで主流に成り得なかったんだろう?と疑問に思われた方も多いのではないでしょうか.この事については様々な理由が考えられていますが,以下にそのいくつかをあげる事にしましょう。
 ●Dvorakが営業的センスを持ち合わせていなかったのではないかと言うのもDvorak配列が開発された頃は世界的な不況期で職に就けないタイピストも多くおり、タイプライタ会社は中古タイプライタを大量に引き取っても新しいタイプライタを売るという販売戦略をとっている状態でした.その状況下でDvorakは『使い易いキーボードは能率を上げ,タイプライタやタイピストの節減を可能にする』と主張していたのですが,これに耳を貸す会社はあるはずがありません。
 しかし、時が経つにつれDvorak配列の有用性を認識する会社も増え,Dvorak配列のタイプライタを生産する会社がでてきたのですが.......
 ●第2次世界大戦に突入してしまった.そのため政府は軍用にすでに採用されていたQwerty配列のタイプライタのみを採用し,それ以外のタイプライタ工場を兵器用の軍需工場に転換してしまいました.
 ●Qwerty配列が国際的な標準仕様となってしまった.ユーザが多い以上簡単に転換することは非常に困難です.
 つまりは『考案された時期が悪かった』,別の言い方をすれば『運の悪いキー配列』という言い方が適切かもしれません.
 最近では
 この様にあまり脚光を浴びなかったDvorak配列のキーボードですが,1970年以降では次の様に少しずつですが,Dvorak配列を支持する動きが出て来ています.
 それは、ANSI(American National Standard:アメリカ規格協会)での選択標準としてですが採択された事(1983年,図6参照),アメリカ・オレゴン州政府などの一部での公用タイプライタとしての採用,オーストラリアでのDvorak配列の規格を制定しようとする動き,などです.
 今後このDvorak配列がコンピュータ用のキーボード配列としてどこまで普及するのかという点については全く予測がつきませんが,少なくとも機械式のタイプライタよりはコンピュータ・キーボードの場合,ソフトウェアでキー配列を変換することが比較的容易ですので,Apple IIcの様に従来のASCIIタイプのキーボードと切り換えができる,という種類の物が増えてくると思われます.
 ただしこれはアメリカなど英語圏での話で,日本においてはカナキーを用意する必要があることや,タイプライタ学校でもこのDvorak配列を教えている所は無いなどの事を考えると日本におけるDvorak配列の普及は当分の間は望めないと思われます.
 そこでという訳ではありませんが,話だけでなく実際にDvorak配列を使ってみたいという人の為にリスト1にPC-8801用のDvorak配列サポートプログラムを掲載しておきます.これはBASICのフックを書き替えて、カナシフトの際のキー配列を図7の様なDvorak配列にするというものです.ただしプログラムサイズを小さくする為に":"などのキーはANS」で定められたものとは異なっています.ぜひ実際に使ってみてDvorak配列の使い心地を試してみて下さい.
 最後になりましたが,お忙しい中いろいろなお話を聞かせて下さった東京大学の山田尚勇教授,レミントンタイプライタの写真を提供して下さった富士ビジネスカレッジ専門学校の細木元生校長に紙上を借りてお礼申しあげます。
(前田)
 キーボード配列だけではなく能率が悪い方法だと思っていてもずっと続けられていて新しい効率的な方法を提案しても受け入れられないということはよくあるものだ。QwertyかDovorakかという問題は、英語圏だけの問題で日本は関係ない話で36年前からどうでも良いと思っていた。なにしろローマ字変換とか無いときはカナと英数を切り替えて使っていたから、「シニス」とか「トントカイモ」とか「ミカカ」とかの入力ミスが笑い話となっていた。
 キーボードからの入力に何をこだわっているのかと36年前から思っていた。
 その後、私が仰天したのはガラケーの入力。若者たちの入力スピードが速くてびっくり。スマホのフリック入力なんてジジイのキーボード入力より速い。このことは、人間の方が対応するから入力方法について合理的なものを開発しなくてもいい。いまさら、スマホの入力方法を新規開発する必要はない。というか、今は音声入力が実用化されているので開発資源を入力方法に割くのは無駄。
 現在の入力予測が進歩してそのうちスマホが人の顔色を見て何を書きたいのか先回りして入力するかもしれない。
 努力の方向を間違えてはいけない。

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