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EFM変調 特集CD-ROM(1)(月刊ASCII 1986年6月号6) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

特集記事「CD-ROM 徹底研究 CD-ROMのすべて 第3回 デジタル信号処理」をスクラップして読み返す。難しい数式が出てきて手ごわい記事だ。理解できなくても良しとする。

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 今月はデジタル変調(EFM)とエラー訂正(CIRC)の基礎」について述べる.デジタル変調によって、光記録の限界に近い」高密度記録が現実のものとなり,エラー訂正技術によって光ディスクシステムが実用/量産可能になったといっていいだろう.
 エラー訂正技術は、デジタル記録/再生システムの信頼性向上のための技術であるが,かつては,装置化が複雑でコストが過大となり,実用性に乏しいと考えられていた。ところが,最近の半導体技術の急速な進歩で,装置化の複雑さはあまり問題ではなくなり、この技術は信頼性向上のための最も経済的な手段として評価されている.

EFM変調(Eight to Fourteen Modulation)
 “変調”とは、与えられた周波数帯域内で、与えられた情報を安定的に記録/再生できるように変換すること,すなわち、与えられた周波数帯域と信号とのマッチングをとることである.
 ここでいうCD方式の周波数帯域とは,次のように考えることができる。
 光学系の伝達関数(OTF:Optical Transfer Function)は2つのレンズの開口の相互相関関数で表される.特別な場合として、2つの開口が同じ時には自己相関関数となる.
 CD方式のような反射ディスクの場合,1つのレンズが光を集光してディスクに照射し戻ってきた光を同じレンズで集めるから,この特別な場合に当たりOTFは2つの円形開口の自己相関になる.
 収差のない円形の開口を持つ光学系は,2つの円形開口の重なりの面積から求められ,次のように書くことができる.
H ( x ) = 2 π { cos -1 x x 0 - x x 0 1 - ( x x 0 ) 2 } x x 0 = 0 x> x 0 x : 空間周波数=2NA/λ x 0 : 光学系のカットオフ周波数
 CD方式では λ=0.78μm, NA=0.45であるから, x0=2NA/λ= 1154(本/mm)
 となり,1mm当たり1154本までの微細パターンを読み出すことができるということになる.  以上の空間周波数を時間周波数に換算するには線速度を掛ければよい。  時間周波数:fは,線速度1.25m/sの時,
f=(2NA/λ)×V1.44MHz
となる。
 ここまでの議論は理想的な話であるが,実際には次のような要因で周波数特性は劣化する.
 ○フォーカス・サーボのデフォーカス
 ○レンズ系そのものの収差
 ○ディスクの厚みむらによる球面収差
 ○ディスクと光軸の傾き(スキュー)によるコマ収差

 以上のように、約1.44MHzに帯域制限された光ディスクに情報を安定的に記録/再生できるようにデータ変換を行うのがEFM変調であり、基本的な考え方は、次のとおりである.
 ○信号の占有周波数帯域を狭くする
 “1”と“0'の反転を少なくする."1"と"0"の反転が頻繁だと信号の周波数占有帯域が広くなり、同一ディスクで長時間記録できなくなる(Tmin大)
 ○クロック成分を多くする
 1シンボル(14チャンネル・ビット)の中で、必ず一度クロック成分を持つようにする.すなわち,できるだけ"1",“0”の反転を多くする必要がある(Tmax小).
 ○直流成分を少なくする
 "0"だけや“1”だけが続くとトラッキングが不可能になったり,クロック成分もなくなってしまう.
 ○シンボル単位の変調とし、他のシンボルとのかかわりを少なくしエラー等によって符号のエラー伝搬が起きないようにする
 図1に変調前のディスク上のピット列と,変調後のビット列の例を示す.

ASCII1986(06)c02CD-ROM_図01W520.jpg
 また図2にEFM変調の変換テーブルを示す.214個の波形パターンの中から,28個の上記要求項目を満足する波形パターンを選べばよいことになる(ただし,"1"が反転を示し“0”が非反転を示す).そこで,Tminは大きいほうが好ましいことになるため、14ビットのパターンは"1"と"1"の間に“0”が2個以上入るものが選ばれる.

ASCII1986(06)c02CD-ROM_図02W520.jpg

 また,Tminが短いほど良いという条件から"1"と"1"の間に入る"0"の数を10個と決めると214個の中に,このようなパターンは267個あり,その中から都合の良い256個のパターンを選んでいる。  実際の変調では,8ビット→14ビットの変換以外にマージンビットを3ビットとっている.これは次の目的で使用される.  ○Tmin,Tmaxのルールを守る
 ○信号の低域周波数成分を少なくする

 前者の条件は,例えば前の14ビットパターンの最後が"1"で終わり,次のパターンの最初が"1"で始まる時を考えれば理解できよう。
 後者の条件は,結果的に「DSV(Digital Sum Variation)ができるだけ"0"に近い値をとるものにする」ということである。例を示すと、EFMではマージンビットが
 ・001
 ・010
 ・100
 ・000
 の4通りあるから,図3-1のデータにこのマージンビットを付加してみる."100"はTmaxの条件から不可能である。残りのビット列に対しDSVを図示すると図3-2のようになる.そこで、一番DSVが"0"に近い"010′のビットパターンがマージンビットとして選ばれることになる.

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 このようなEFM変調の結果の信号スペクトルを図4-1に示す。低周波スペクトル成分が非常に少なくなり、表面の傷などにより信号自体は影響を受けにくく、安定的なサーボも可能となる.また,広帯域スペクトル(図4-2)からは、約400~500KHzにピークがあり,4.3218MHzにチャンネルクロックの値があることが理解される.

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 ディスク上のピットの長さには、9通りあることは既に述べたが,
Tmin = 1001 ―最小ビット Tmax = 100000000001 ―最大ビット
 であるから、この2つの間の値をもつ合計9通りの長さがあることになる.EFMの変調パラメータをまとめると次のようになる.

・最小反転幅 (Tmin) = 1.41T ・最大反転幅 (Tmax) = 5.18T ・検出窓幅 (Tw) = 0.471T ・拘束長 8T ・直流成分 なし(ただしT=データビット長)

何も考えなく使ってきた製品の基礎となる技術が理解できなくとも、技術者がこれほど考えていたことが知れて気分がいい。頭のいい人は凄いなと思う。

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